統計分析のサイカ CEO/COO/CTOインタビュー 2億円の資金調達で狙う世界とは?

「世の中にある悲しみを統計分析で解決したい」そんな壮大な夢を語るのは、株式会社サイカの代表取締役 CEO平尾喜昭だ。創業3年目の同社では、統計分析ツール「adelie」を提供しており、5月15日にシリーズBの資金調達の完了を発表、さらにadelieを進化させていく。

株式会社サイカとはどんな会社なのか。そしてadelieを通した統計分析で世界をどう変えようとしているのか。同社代表取締役 CEO平尾喜昭氏、同COO山田裕嗣氏、取締役CTO海老原智氏に話をうかがった(以降敬称略)。

統計学との出会いが進路を決めた

平尾は中学時代に父親が勤めていた会社の倒産を経験し、様々な不幸を目の当たりにした。「世の中にはどうしようもない悲しみがあることを知り、それをなんとかしたい」少年だった平尾にとってこの経験は大きく、生涯のテーマとなった。世界の悲しみを癒やす手段として一時はプロのミュージシャンを目指したこともある。

そして、大学時代に統計学に出会い衝撃を受ける。

「それまではどうしようもない悲しみが起きるのはしょうがないこと、それに対してなんとかしようと思っていたが、統計学があれば悲しみを起こさないことができるかもしれない。父親の会社も統計学があれば、倒産を避けられたかもしれない。」と平尾。というのも、その会社はカリスマ経営者の経験と勘に頼った経営をしており、裏に隠された数字の歪みに気が付かなかったことが倒産につながったからだ。 「統計が万能とは言わないが、0.1%でも役に立つなら、それに賭けたい」と起業を決意。その夢を一緒に進めてくれたのが、平尾が高校1年の時に塾講師と生徒という関係で出会ったCOO山田裕嗣だ。

「高校生の頃から、『ライブのための協賛企業を募りたいから企業向けの資料の作り方を教えてほしい』とか、変なことばかり言っていました。彼が大学生の時にやっていた学生団体の事業計画を手伝うことになり、そのまま一緒に起業することになった」と山田は振り返る。山田は大学を卒業後、人事系コンサルに6年在籍、さらにグリーで採用担当を経験した人事、HRのプロフェッショナルだ。

大学生だった平尾からの起業の誘いに不安はなかった。「自分と平尾はタイプが正反対。10年前から大きな夢を語って人を巻き込んでいくのがうまい平尾に対して、自分は着実に実務に落としこんで進める。平尾が得意なことと自分が得意なことも良い意味で正反対です。」

夢と実務の間で迷惑を被ることが少なくないと笑うが、「大きな夢を描くのは平尾だからできることで、サイカ全体としてはよいこと。平尾は他のメンバー、株主に支えられ可愛がられるリーダーで、それがサイカの武器になっている」と山田は分析する。

一方平尾は山田について「大学の頃から人のことを知りたいと心理学を学び、その後は社外と社内からHR業務で人を見ている。長期的に芯がぶれない」と全幅の信頼を寄せる。

CTOとの偶然の出会いが会社の方向性をプロダクト開発に変える

創業時は、既存のツールを用いて統計分析を行うコンサルティングサービスを事業にしていた。しかし、既存のツールを使った統計分析の煩雑さに限界を感じていたときに、CTOの海老原智がジョイン。「プログラミングの力で業務が効率化できる」と言われ、社内ツールの開発に取り組んだ。その社内ツールをクライアントに見せると「このツールが使いたい」と言われるようになった。

「統計分析のプロではない人でも、自分の知識だけで統計分析ができるようになれば、もっとデータを身近に使えるようになる」と平尾はプロダクト開発にかじを切り、「adelie」をローンチした。

サイカの方向性を大きく変えることになった海老原とは、偶然とあるパーティで出会った。海老原は、グリーの急成長期に在籍していたエンジニアだったが、会社を辞めて起業するか、スタートアップにジョインするか迷っていた。

パーティの後日、平尾と海老原はサイカのビジョン、そして海老原の起業のアイデアなどを語り合った。平尾は海老原と話して「うちの会社に入らなくても、この人のこれからの人生を知りたい、応援したい」とその人間性に惚れ込んだ。また、非エンジニアの平尾にも複雑な概念をわかりやすく説明できるそのスキルにも感銘を受けた。

一方海老原は、平尾がプロミュージシャンの経験を通し「ビジネスとクリエイティビティの絶妙なバランス感覚」を備えていることから信頼がおけると判断。統計データを使うビジネスにも興味を持ち、ジョインすることを即決した。平尾は「まさか来てくれるとは思わなかったので驚いた」とその時の心境を明かす。

シリーズBの投資で業界に特化したツール開発に注力

シリーズBの資金調達では、シリーズAで「adelie」がマーケティング業界のトップであるアサツーディ・ケイ、リクルート、セプテーニ、オプトといった錚々たるクライアントをつかみ実績を示したことが評価された。そしてもう一つのポイントがツールをさらに進化させるため「業界特化」というヒントを得られたことだ。

adelieで統計分析が簡単にできるといっても、その業界の課題認識や仮説設定ができないと使いこなすのは難しい。しかし、クライアントとやりとりする中で、業界ごとに異なる分析パターンのニーズを掴んでいった。そこで各分野に最適化したツール開発を次のステップに定めた。

「普遍的なツールとは真逆で、業界外の人は使えなくても、その業界の人はすべからく使えるものを目指す」と平尾。

特化型としてまず開発するのが「営業」特化の「Rockhopper」だ。 Rockhopperは、セールスパーソンの行動データに基いて、成果を出すための最適な行動を提案するWebアプリ。セールスパーソンの日々の行動の効果を数値で見ることがでるようになる。Salesforceと連動させて開発する予定だ。

「このツールによって『営業マンの育て方』そのものが大きく変わる。」と平尾は自信を見せる。これまでは、エース営業マンの手法を研究して、その営業マンを目指すのが営業の育て方だったのに対し、Rockhopperは営業マン個人個人の得意・不得意を分析して、その人にカスタマイズされた営業の改善を提示する。営業マンが自分の営業の行動と成果を入力すれば、仮説を元にデータでヒントを与えてくれるというのだ。

また、その先に「マーケティング」に特化した新たなプロダクトの開発も予定されている。

adelieで人が主体的に物事を深く考えるようになる

今後業界に特化したツール開発を進め、必要なデータを最大限活用できるようにすることを目指す。同時に平尾は「データは答えではない」と言う。「精度100%に近いデータであっても、それはヒントに過ぎず、最後は人が主体になって意思決定をする。サイカのプロダクトに触れると、夢や目標を達成するために頭が回る、右脳と左脳の両方で考えられるようになったと感じてもらいたい」と平尾。

「adelie」の提供分野が広がれば、多くの人が仮説、問題意識を持てるようになり、データから得られた示唆を使って、次の行動を変えていける。

「ツールを使いこなす人が増えれば、データから主体的に考えて問題意識を持って世界をよくしていける。一般的にツールの進化は人を楽にする反面、人が思考しなくなると言われますが、adelieはその逆。人がデータに触れることで、どんどん自分で考えるようになるんです。今後はデータ界のインテルを目指し、様々なプロダクトの中に組み込めるデータ分析の部品として一番いいものを提供しているといわれたい」と平尾はその先の世界を見据える。

人類の思考を変える、そんなプロダクトを一緒に開発するメンバーを募集中

同社では、現在Forkwell JobsでPythonを使ったWebアプリケーション(フロントサイド/サーバーサイド)のエンジニアを募集中だ。

海老原は期待する人材の要件として、Webアプリの開発経験が2-3年位あり、基本的なエンジニアリングをおさえていること、人数が少ないチームなので自主的に動けることをあげる。Pythonを使ったプロダクト開発でも注目される同社ではあるが、PythonはWebアプリ開発の経験者ならキャッチアップしやすい言語なので、採用では特にPythonの実務経験は求めないという。

「技術という手段が目的化するのではなく、ユーザーとビジネスのバランスを考えて問題解決思考ができる人。これから新しい戦力が増えて、エンジニアチームとしても成長していく中で、大きな夢をチーム全体で実現するために自分のやるべきことができる人。同じ目的を達成するための同志として、常にユーザー目線で考え自ら動き、社会人としての常識を大事にする人と働きたい」。

同社の開発環境は、ツールでの自動化、高速化を実現するべくモダンな開発環境を整えており、生産性の高い効率的な開発ができると海老原。

平尾は「サイカなら、データで世界をよいほうに変えることができる。データを使うのが当たり前になって、人間の思考を補佐する言語の1つにしていきたい。日本発で人類を変えるという夢に乗ってみたい人はぜひ応募してください」とメッセージを送った。



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