JapanTaxiの開発現場にFJが潜入取材

100年続く業界を新たなステージに導く-大変革を進める「JapanTaxi」が求めるエンジニア像

  • 2015-11-06 公開
  • 取材・執筆:高橋美津

スマートフォンを使っていつでも自分のいる場所にタクシーを呼べる「タクシー配車アプリ」。近年ではさまざまなアプリが登場しているが、なかでもJapanTaxiが提供する「全国タクシー」は、その先がけとして累計180万ダウンロードを超える人気の定番アプリだ。

タクシー事業者の老舗、日本交通の情報システム子会社として1977年に創業した同社は今、この「全国タクシー」を中心としてタクシー業界に「変革」を起こそうとしている。今回は、そのビジョンと、会社の成長に必要不可欠なエンジニアについて、代表取締役社長の川鍋一朗氏(写真中央)、システム事業部CTOの亀井松太郎氏(写真右)、同じくスマートフォン事業部CTOの岩田和宏氏(写真左)に話を聞いた。

CTOの亀井松太郎氏によれば、主に日本交通における社内システムの開発を中心とした事業を長く展開してきた同社は、「全国タクシー」を開発・リリースするまで、本格的なコンシューマー向けスマホアプリの開発経験はまったくなかったという。

同社のスタンスが特に大きく変わったのは、日本交通の3代目社長として川鍋一朗氏が就任して以降のことだ。川鍋氏は「タクシーは『ひろう』から『えらぶ』時代へ」のスローガンを掲げ、日本交通が利用者に「選ばれる」タクシー会社へと変革することに尽力している。

わずか4ヶ月でリリースしたアプリに、問い合わせが殺到

川鍋氏は、乗客のライフスタイルに合わせ、ハイエンドの「黒タク」、妊産婦向けの「陣痛タクシー」、子どもの送迎に特化した「キッズタクシー」、シニア向けの「サポートタクシー」など、さまざまな画期的なサービスを展開する一方で、乗客との新たなコンタクトポイントとしてのスマートフォンアプリに着目し、配車アプリの開発を推進した。

JapanTaxiの強みは、情報システム子会社として培ったタクシー会社向け配車システムの開発実績と、タクシー業務運営に関する長年のノウハウの双方を持っている点だ。この既存のシステムに、フロントエンドとしてスマホアプリを作り、繋ぎ込む仕組みを用意することで開発を進めていった。同社の最初のスマホアプリである「日本交通タクシー配車」は、亀井氏を含む2名のエンジニアの手によって、実質4カ月ほどでリリースに漕ぎ着けた。

このアプリとシステムは、タクシー利用者とタクシー会社の双方から、当初の予想以上の反響を呼んだという。

「他のタクシー会社からは『このアプリのソースコードを1000万で売ってくれ!』というオファーもあったんですよ。私も1000万なら喜んで売ろうと思ったのですが、亀井から『ソースコードを裸で全部売るなんて、何考えているんですか!』と止められました(笑)」(川鍋氏)

「スマホから使える配車システムを導入したい」というニーズは、日本全国のタクシー会社にあった。その引き合いに応じるため、同社ではシステムのバックエンドをWindows Azure上に置き、クラウドサービスとして提供することを決めた。さらに、各タクシー会社との提携を進めることで、アプリそのものを全国規模で利用できる「全国タクシー」へと発展させてきた。

現在、「全国タクシー」では47都道府県に存在する150グループ、約2万5000台のタクシーをアプリから呼ぶことができる。また、日本交通グループにおいては無線配車依頼の約30%が、スマホアプリを経由したものになっており、乗客との重要なコンタクトポイントとしての地位を着実に築きつつある。亀井氏も「もし川鍋の後押しがなかったら、こうした大きな変化はなかっただろう」と話す。

ITを通じ、タクシー業界を再編する

同社が社名を「JapanTaxi」に変更したのは2015年8月のこと。川鍋氏は、「ITを通じたタクシー業界の再編」に着手していく姿勢を明確に示した。

「同社の最大の強みは、コンシューマー向けスマホアプリの開発だけでなく、タクシー事業者向けのシステム開発、さらには個々のタクシー車内に搭載する業務向けのドライブレコーダー、タクシーメーター、IP配車無線システム、決済システムなどの自社開発も合わせて行っている点。タクシー事業を運営していくために必要なシステムのすべてを、自社で開発、提供していける体制が既にあるというわけだ。

乗客の持っているスマートフォンだけでなく、全国を走っているタクシーそのものから得られる多様なデータを収集し、分析することで、これまでにない乗客向けサービスや、乗車業務の効率化実現を目指した取り組みを進めていくことが可能なのだ。

「例えば、乗客から配車依頼のあった場所と、乗務中のタクシーの位置情報とを組み合わせた『最適配車アルゴリズム』の作成。”晴れの日は2割引き”など、天候や時間などで変化するタクシーの需要に合わせて運賃を変化させる『ダイナミックプライシング』の実現。タクシーに設置したOBD2(On Board Diagnosis 2)センサーやIoTデバイスから得られるビックデータのさらなる活用など、業界を変革するようなアイデアを実現するための基盤が既に整っている。これらのアイデアを、現場でのオペレーションにまで落とし込んで実用化していくというのは、乗客、タクシー会社、そしてドライバーのすべてに対してアプローチする手段と技術を持っている、私たちにしかできないことなんです」(川鍋氏)

エンジニアに求める「自主性」と「データアナリスト的思考」

「JapanTaxiでは、こうした事業モデルの推進に向け、技術開発に対する投資を積極的に進めている。「会社運営と技術開発に対する投資比率を同程度にしたい」という川鍋氏の言葉からも、その本気度が伺える。

「新興のITベンチャーの中からも、従来のタクシー業界のビジネスモデル自体を覆すような強力な勢力が出てきています。こうしたところと対等に戦って、さらには勝っていくためには、われわれも技術レベル、特にクライアント開発のレベルを急速に高めていく必要があると考えています」(川鍋氏)

JapanTaxiでは、2016年3月に、現在の東京都北区浮間から、千代田区紀尾井町へのオフィス移転を計画している。これも、同社がITをコアコンピタンスとした企業へと急速に変わっていく「覚悟」の表れなのだという。新オフィスの入り口にはタクシー車両も搬入し、ハードウェア製品を含む同社ソリューションのショールームとすることも考えているそうだ。

「現在のオフィスは典型的なタクシー会社の一角にあるのですが、移転を機に、ITを主軸とする企業にふさわしい環境を整えます。われわれを訪ねてくださるお客様と、ITによるタクシー事業変革のイメージを共有できるものにするのはもちろん、JapanTaxiで働いている社員、エンジニア自身も、これまでとは意識を変えて、未知の事業に取り組める環境を作りたいと考えています」(川鍋氏)

現在、亀井氏と同じくスマートフォン事業部CTOを務めている岩田和宏氏も、「ITによってリアルな社会にインパクトを与える」というコンセプトに共感し、JapanTaxiへの参加を決めたエンジニアである。岩田氏は、大手セキュリティ会社での画像処理に関する研究開発をはじめ、国内の大手ITベンチャー、シリコンバレー企業での業務経験を経て、スキル共有コミュニティサイト「ストリートアカデミー」のCTOを勤めた経歴を持つ。

入社間もない岩田氏だが、現在はMicrosoft Azure上に構築されている「全国タクシー」のインフラを、AWSおよびRuby on Railsによって置き換える作業に着手しようとしている。今後、このシステム上でさまざまなアイデアを実現していくにあたっては、技術者コミュニティが充実し、事例も豊富な技術を採用しておくことが有利になると考えられたためだ。そのため「直近では、主にネットサービス系でのサーバサイド開発、アプリ開発の実績がある人に、JapanTaxiに参加してほしいと思っている」と話す。

「それに加え、テクニックにおぼれず、目の前の課題について、解決策を自分で考えて実装し、効果を検証して結果を出せる人であれば理想的ですね」(岩田氏)

同社では、業務システム系の経験を持った人、ネット系のシステムやアプリ開発の経験がある人などを幅広く募っている。そのいずれにも共通して求められるのはエンジニアとしての「自主性」と、「データに基づく検証と改善から結果を出す」というデータアナリスト的思考だという。

「ITの力でリアルな世の中に変化を起こすことに興味があるエンジニアならば、JapanTaxiでの活躍の場は広いと思います。逆に『何でもいいからやらせてほしい』という『仕事待ち』のマインドだと、力を発揮できないかもしれません」(川鍋氏)

JapanTaxiでは数年内に、同社のシステムとタクシー業務のノウハウを元にした海外進出も視野に入れているという。1.6兆円産業と言われる国内のタクシー業界のみならず、日本の「ホスピタリティ」と、先進的なシステムの両輪を武器に、世界に打って出る同社において、エンジニアが活躍する場はさらに広がりそうだ。


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